巨樹たち

宮城県仙台市「定義如来のイタヤカエデ」

カエデの紅葉もどうでしょう

 定義山西方寺(浄土宗極楽山西方寺)は、平家ゆかりの歴史あるお寺ですが、めったに正式名称で呼ばれません。
 仙台では一般的に「定義如来」、ネイティブは「じょうげさん」とも呼ぶそうです(「上下」という地名だったとも)。
 というかむしろ、正式名だけでは通じないかもしれない……。

 広々とした敷地に、庭園美や、多数の立派な仏教建築を拝むことができ、その上、あの大きな油揚げを食べられる……観光地としてもたいへん人気があります。
 五重塔を見た後、道路方向へと歩き、手打ちそば屋さんへ向かっていく。
 すると、庭園風景の一部として現れるのがこのカエデ。

 葉の形状からしてイタヤカエデです。
 本品種はかなり寒さに強く、日本では東北(秋田)や北海道に自生している。
 ちょっとカナダの国旗を彷彿としてしまいますが、あちらはメープルシロップが採れる「サトウカエデ」という品種だそう。
 もっとも、イタヤカエデからも薄いながら甘い樹液は採れるようで、これが凍ったものを……つまり、「ゴールデンカムイ」にも出てきたアイヌのアイスキャンディーですね。

 定義山へは何度か脚を運んでいて、そのたびこのカエデを見ていますが、紅葉時以外、足を止めている人はほぼ見かけません。
 主幹は地上3~4メートルほどで失われ、樹高こそありませんが、黒々とした太い幹から枝を広げている姿には、巨樹好きならすぐに惹きつけられるはず。
 葉の大きいイタヤカエデならばこそ、紅葉(黄葉)時はいっそう見映えがします。

 まあただ、その時期には他の樹々、もとい山ごとが負けじと色づいておりまして(ゆるぎない名所)、私が撮っているのに気づいた人たちがこのカエデにスマホを向けだす……みたいな空気。
 それでもOKです! もっと注目してあげてほしい。

 気になって環境省「巨樹・巨木林データベース」で調べてみましたが、宮城県内で登録されているイタヤカエデの巨樹はわずかに2件しかなく、所在から言ってこの樹ではない。
 幹周囲は300cm、350cmで、つまり、この「定義如来のイタヤカエデ(仮称)」もここに加えるのに充分な巨樹だと言いたいところ。
 側面に回ってもけっこう厚みがあるし、幹周囲350cmくらいはつけても不思議ではない……かも。実測してみたいものです。
(きれいな庭園の植え込み内なので、踏み入れない)

 全国ではどうか?
 さすがに壁は分厚く、600cmを超えるものが2本。500cmを超えるのも多数ありました。
 しかし、大きなものは深い山中のものでしょう。

 その点、この樹なら、管理してもらっているおかげで樹勢は良好、危険を冒すことなく紅葉の最盛を味わえるのもとてもいい。
 お訪ねの際は注目してみてくださいね。

「定義如来のイタヤカエデ」
(仮称:勝手に命名)
 宮城県仙台市青葉区大倉字上下1
 推定樹齢:不明
 樹種:イタヤカエデ
 樹高:7メートル(目測)
 幹周:3メートル以上(目測)

 訪問:2019.10、2021.10末、他

探訪メモ:
 広大な駐車場がありますが、紅葉時期には付近道路に渋滞が発生するくらい人気のスポットです。

 定義山の紅葉をば。
 定義如来には他に、壇ノ浦に没した安徳天皇ゆかりの「天皇塚」があり、この上に育ったとされる縁結びのケヤキ(幹周囲6~7メートルくらい? 根だけが残っている)や、幹周囲4~5メートルほどのスギもあります。

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