巨樹たち

山形県山形市「津金澤の大スギ」

酷暑と積雪に打ち鍛えられた大杉

 山形県の巨樹探訪。
 大物「松保の大杉」の印象深い夏でしたが、山形市近郊にも見逃せないスギがあります。
 山形駅から南へ数キロ、市街地からもそう離れていない。
 ちょっとばかり狭い集落へと入りますが、辿り着くのは難しくありません。
 ねじり幹のサクラと、なんだかよくわからないオブジェ?がお出迎え、その先に長い参道が伸びている。

 関東の人なんかは(というか自分がそうですが笑)、東北まで来れば夏でも涼しかろう……とか、そのくらいの印象かもしれませんが、山形の夏は暑い。とても暑い。
 ちょっと質が違う暑さで、ぐらぐら煮え立ち、至るところから陽炎が揺らめく。
 聞けば、熊谷が有名になる以前、日本で最も暑かったのは山形市だったそうで。
 夏は暑い、冬は寒くて大雪。まったくすごいところ。

 石段の終わりに、そんな極端な四季に育まれた大杉がそびえています。
 これが県指定天然記念物「津金澤の大スギ」

 日本海側に多い裏杉の特徴をよく表しており、ごつごつと節くれ立った不規則なシルエット。
 それでも根幹が一本のところを見れば、ある程度御神木として管理されてきたように感じます。
 主幹が折れてしまえば、そこから分岐していくのが裏杉の生存戦略。

 目通り幹周囲8.8メートルとのことで、至近で眺めるとかなり迫力があります。
 根幹樹皮の模様に、雲か波が地中から湧き出しているような連想をします。

 根張りは明瞭ではなく、どうも唐突な感じ。
 石段脇の立地も似ているし、福島県「大悲山の大杉」同様、根本をいくらか盛り土されているかもしれませんね。

 樹高30メートルとなかなか高く、見上げればまぶしい日光に目を灼かれる。
 葉はモコモコとして、塊感が濃いタイプ。

 深く入った先でポケット状に開け、ちょっと居心地が良い熊野神社。
 そこから振り向けば、

 こんなふうに、またずいぶん唐突に大杉が見えます。
 下の方にも大きめの枝が付いていますが、不格好。
 いかにも雪の重みで折れ、折れつつも垂直に立ち上がろうとする……裏杉の一生が形になっているような幹姿。

 端正な表杉ばかりを見てきたら、不細工だなあと思ってしまうかも。
 逆に、こんな大裏杉ばかり見て育った人が、関東で定規を当てたような表杉を初めて見たらどう思うだろうか……。
 汗を拭き拭き、そう考えました。
 大杉のウロには、ミツバチが巣を作っているようでした。

 弘化2年は西暦1847年だから、250年以上前にはすでに崇められるような大杉だったらしい。
 特筆すべきはタタリ伝説。
 元々めおとスギだったものが、未亡人スギになってしまい……ううむ、ちょっと怖い。
 理解しがたく治療できないパンデミックこそ、当時最も恐ろしい災厄だったに違いありません。
 その中で……今と同じ姿だったかはわかりませんが……このスギの荒々しい姿もいっそう恐ろしげに映ったことでしょう。

 汗まみれでしたが、充実感ある訪問でした。

 その後、山形市内でおいしい牛肉を買って帰る。
 山形人は牛肉ばかり食っているそうですよ。いいなあ。
 そして、そば屋ではラーメンを食うとのことです。笑
 (※その後、「冷やしラーメン」にハマることになる著者)

「津金澤の大スギ」
 山形県山形市津金沢322
 熊野神社
 推定樹齢:1000年
 樹種:スギ
 樹高:33メートル
 幹周:8.8メートル

 県指定天然記念物
 訪問:2019.8

探訪メモ:
 直近の道路がけっこう狭いので、クルマをこすらないようにご注意。
 熊野神社前に駐車&展開スペースがありますが、2、3台のキャパです。

 現地解説や山形県のサイトには「根回り」や「最も太いところ」の数値が書かれており、こちらを引用している資料もみかけます。

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