巨樹たち

福島県福島市「金沢黒沼神社のケヤキ」

油断してると吞み込まれそう

 冬一歩手前の福島県福島市松川町。
 金沢黒沼神社を訪ねたのは、ここに参拝してみたいというリクエストからでした。
 神社愛好者の間では知名度のある神社のようです。

 主要道路から逸れ、道路下のトンネルを抜けて到着。
 杉並木が大きく育った、いかにも歴史の古そうな神社です。
 11月中旬の福島市の午後はどんよりと曇って寒く、いましも雪がちらつき始めそうですが、何組も参拝客がおられました。

 巨樹があると知ったのは、実はここへ向かう車中。
 Googlemapに投稿された写真で、かなり大きなご神木が確認できたのです。
 巨樹目当てで来る予定ではなかったのに、これはツイている。

 そのご神木はケヤキで、拝殿の向かって右手、蔵のような建物のすぐ隣に立っています。
 解説板はありませんが、幹周は7メートルから8メートルほどでしょうか。
 太い。ケヤキ巨樹によくある漏斗型にならず、ぼってりと太いまま立ち上がっている。
 かなり見応えするうえ、幹全体が丁寧にくり抜いたかのようなウロになっていて、さらに目を驚かせます。
 おそらく大きな折損で引き裂かれ、傷痕が腐朽していって、このような姿になったのでしょう。

 一本の樹木にもかかわらず「立ち入り禁止」などと書かれてしまう。
 こういうカタチになってなお逞しく生き続けるのは、やはりクスとケヤキですね。
 山形県「東根の大ケヤキ」は家なき方がウロで生活していたとか聞きましたが、この巨樹も中で一夜を過ごすくらいなら問題はなさそう。
 電話ボックスくらいの容積はありそうだし……最近の若い人は電話ボックスって入ったことあるんですかねえ。
 いや、電話ボックスにしちゃ、ドでかい大蛇の喉の奥を覗き込んでいるようで……。

 ケヤキ:「ボンヤリシテルト、タベチャウゾー!!」

 失われた主幹の代わりに大蛇のような大枝が複数本、拝殿の前まで伸びている。
 心材部が失われて外側部分だけで立っている樹とは思えない長い枝ぶり。
 すでに落葉していますが、夏場は参拝者に木陰を差しかけるのではないでしょうか。

 この角度で見ると、怪物が建物に身を寄せて「木のフリ」をしてるみたいでちょっとおもしろい。
 どう見ても「ただの木」では片づけられない巨樹ですが、調べた限りでは天然記念物無指定のようです。
 市、いや、県指定天然記念物だったとしても納得の大きさと個性アリの大ケヤキ、参拝の際にぜひ注目して頂きたいです。

「金沢黒沼神社のケヤキ」
 福島県福島市松川町金沢宮ノ前45
 金沢黒沼神社
 推定樹齢:不明
 樹種:ケヤキ
 樹高:20メートル(目測)
 幹周:7~8メートル(目測)

 訪問:2023.11

探訪メモ:
 Googlemapの表記だと「黒沼神社」ですが、これだと重複する他社あり。

 現地には十分な広さの駐車場があります。
 ご熱心なことに、タクシーチャーターで参拝に来られている方もおられました。

 拝殿の真後ろ、ほぼ真ん中の位置で立ち上がっているスギも幹周4メートル以上はあり、立派でした。

 鎮座1300年とされる金沢黒沼神社は、国の重要無形民俗文化財(市指定でもある)「金沢の羽山ごもり」、県の重要無形文化財「黒沼神社十二神楽」と、二つも重文指定の伝統行事を守っています。
 ご神職からお声がけ頂き、「男性は『金沢の羽山ごもり』に参加もできますよ」とのことでしたが、東北・真冬の・裸参りは、ちょいとばかし耐えられないとおもいます。中綿入りのジャケット着ててもすでに寒いし……軟弱でスミマセン。汗

 他にも、祭神が「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」に加えて「沼中倉太珠敷命(ヌナクラノフトタマシキノミコト、お、覚えられない……)」という、初めてお聞きする神様だったのも印象深い。三十代 敏達天皇の神格化とのことです。
 さらに、この11、12月は白と黒の麒麟が巡るパワースポット強化月間! 
 ……みたいな神秘な話題も耳にし(うろおぼえ)、実入り多い参拝が果たせる神社です。

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