言われた通りにイチョウの背側へと回ってみる……と、その印象は一変しました。
確かに、正面からはこの姿はまるで見えず、想像もできなかった。
老紳士曰く、
「氷川神社が今も社殿や文化財を保っているのは、東京大空襲の焼夷弾に焼かれなかったため。
しかし、あのイチョウは……」
落雷や強風被害とは明らかに印象の異なる損傷の仕方です。
炭化した部分はいまだに黒々としていて、まるで去年燃えたばかりのよう。
燻りの熱や焦げ臭ささえ感じられそうでした。
東京には他にも戦火に焼かれたイチョウが存在します。
上記した「善福寺のイチョウ」からしてまさにそれで、一旦は枯死しかけたものの、息を吹き返して今に至るそうです。
巨樹を見続けていると、イチョウの不死身の生命力には呆れながらも慣れてきますが、今回はそれと同時、懸命に消火活動する過去の人々の姿も浮かびました。
大火、震災、空襲、大規模再開発……何重にも押し寄せる危機を乗り越え、今もここに立っている。
赤坂氷川神社には「いちょう守」というかわいいお守りが売られていますが、このイチョウに霊妙な力を感じる気持ちは十分共感できました。
4件のコメント
to-fu
時速10kmで進行する首都高なるファッキン・自称高速道路に翻弄されながら、隣の高速バスを恨めしく眺めてましたよ。ああ、自分で運転しない車って素晴らしいなと。景色眺めて、それに飽きたら寝てしまえばいい。目覚めればそこは目的地だ。しかも単独なら高速代+ガソリン代費やして車を出すよりずっと安いという…夢のマシンじゃないか。
しかし改めて思うのは、東京って本当に緑が多いし実は都心には巨樹もたくさん生えていたんだなと。
戦火の跡が生々しく残っているものもあり、数値抜きにしても見応えのありそうなものが非常に多い。
善福寺のイチョウがあまりに有名ですが、こちらもなかなか壮絶な姿をしていますね。
幹の空洞の迫力からなのか実際のサイズ以上に大きなイチョウに見えます。
駐車料金の高さにビビッて早々に帰路についてしまいましたが寄り道しておくべきだったか…
(ホテルの提携駐車場でしたが、割引チケットがなければ一晩でイチマンエン近くかかってました 笑)
この記事を見るのがもう少し早ければ、東京に追加で一泊宿を抑えて巨樹巡りしたかったです。
狛
to-fuさん>
その節はお疲れ様でございます……。
首都高の渋滞の数時間は、それだけで一晩750キロメートル一気走破と同等の人間性破壊をもたらしますよね。
数度経験以来、力一杯首都高を避け続けている人生です。
ええ? P代がイチマンエン!? もうほんとヤダ、東京怖いしかない……。
本当の意味で東京23区の巨樹を求めていくと、この「戦火」というキーワードが大きな意味を持ってきますね。
おそらくそれ以前はもっともっと巨樹の多い都市だったのだろうと。
その点で、生き証人であるこの「氷川神社の大銀杏」は、東京の近代を象徴する巨樹だったと印象に残りました。
若くて大きな樹、変わった樹を見るつもりで歩けば、東京23区でもけっこうおもしろい発見ができそうですよね。
折々、関東出張がてら齧ってみたいです(善福寺のイチョウはわざと次回のため未訪問にしておきました笑)。
あー、でも、奥多摩や青梅はどうすればいいんでしょうね。レンタカー?
RYO-JI
東京に巨樹のイメージはまったくありませんが、こんなのが存在していたんですねぇ。
傷付いた巨樹と言えば暴風や落雷、虫や菌類などの影響はよくありますが、まさかの戦火。
そうか、確かに場所柄歴史を振り返っても充分あり得ますものね。
いくら大都会とは言え、巨樹が少ないのはそういう理由もあるんでしょうね。
苦労して辿り着いた山奥の巨樹は言うまでもありませんが、電車で行けてしまう都会の巨樹との出会いも新鮮ですいいですね!
またタイミングよく老紳士が現れて声をかけてくるだなんて出来過ぎですよ。
恐らく狛さんの様子から声をかけられたんだと思いますが、まるでこのイチョウが老紳士になって語り掛けてきたような錯覚に陥りそう。
狛
RYO-JIさん>
同感です。スクラップ&ビルドし続ける東京23区においては、一本の樹に注目することなんてできやしないと思ってしまいますね。
改めて巡ってみれば、そこにさらに「戦火」という巨大な要因を知ることになる。
東京という都市はそうして流動してきたのだと……
この大銀杏こそ東京史の貴重な証人だと書いても、大袈裟な文句ではないと思います。
未練がましく書きましたが、ほんとはアオギリを捜しに行ったので笑、大銀杏のエピソードは頭に入れてませんでした。
電車と徒歩での巨樹巡りはかなりせわしなく、声をかけていただけなければ、「ああ、そこそこ大きなイチョウだ」くらいで終わっていたかもしれません。
正面からただ眺めていただけでは、背面がこうなってるとはまず気付けない。それがこのイチョウの特徴でもありますね。
「氷川神社に来たならぜひ撮って下さい」とおっしゃられたので、これはもうイチョウがそう語ってるのと同然だなと僕も思いました。
予想外にやり甲斐のある探訪、出会いでした。