巨樹たち

福岡県八女市「南馬場の大樟」

若々しい街中の大樟

 「鈍土羅の樟」を探していた時、目指すべき熊野神社と間違えて熊野速玉神社を見つけてしまったのですが、実はここにも見るべき大きな楠があることがわかりました。 
 朝早くから動き出したおかげで時間もあったし、ついでと思って立ち寄りましたが、これもぜひ見るべきと勧められる素晴らしい樹でした。

 縮尺大きめの地図を頼りに近くまで来られれば、探す必要もありません。
 周囲に高い建物がなく、かなり遠くからでもこの樹がドーンとそびえているのが一目瞭然だからです。

 いい樹に出会う日です。
 幹に空洞などは全然ないし、鈍土羅の樟にも増して若々しく、みずみずしい樟です。
 囲いなどもないので、直接幹を見上げることができるのも嬉しい。
 大きさ、逞しさを存分に味わうことができます。

 目測でこのくらいかと見積もってみるところ、おそらく目通り8~9メートルほどの太さではないかと。
 単幹でプロポーションの良い樹なので、あまり大きな幹周囲の数字を出せませんが(でも充分太い)、この樹が若いという証拠とも言えると思います。
 これからが見もの。どんどん巨大化し、変形し、度肝を抜かれるような巨樹に変貌していくぞ……というような旺盛な生命力を感じます。

 それにしても、樹冠がみごと。
 かなり高い位置で広大な範囲に枝を広げている。幹の側で見上げると視界全部が枝葉の天井に覆われます。
 想像してみてください……体育館の天井が、枝や葉っぱでいっぱいなんですよ。

 早朝の黄金色の光が差し込み始め、鳥たちがいっせいに活動を始める。
 無数のよく鳴く小鳥たち、巣をかけている山鳩、もっと大きな鳥……ここは彼らのアパートなのでしょう。
 さあさあ今日も出かける時間だ、支度はできたか、お母さんごはんまだー? 
 ……とかなんとか、大変賑やかなドラマがたくさん、見上げる視界の中に散らばっていました。

 喜んで撮りまくっていると、朝の散歩のおばさん登場。
「速玉様を撮ってるん? 速玉様はここにはおらんのよー」
 と、意外過ぎる情報を授けてくれました。
 ……え、いないんですか?(しかし詳細はナゾのまま)

 いやあ、いい樹ですね! と褒めると、逆に渋い顔をします。
「そうなん、もうとにかくでっかくて鬱蒼としてねえ、これのせいでせっかくの花火も何も見えんのよーホント!」

 ……だそうです(苦笑)。
 まあ確かに、この大きさと枝張りでは無理もないかも。
 巨樹のそばに暮らす「あるある」でしょうね。

 訪問時、解説文を見つけられませんでしたが、実は存在するようです。
 他のサイトさんなどを参照すると、この熊野速玉神社は1300年くらいの歴史があるそうで、神社建立と同時に植えられた楠があるとのこと。

 実際見てみた素人意見ですが、おそらくこの樹は別の樹か、もしくは二世ではないかと。
 樹齢1300年というには若すぎ、それこそが持ち味の巨樹ですから。

「南馬場の大樟」
 福岡県八女市馬場 熊野速玉神社
 樹齢:300年以上
 樹種:クスノキ
 樹高:35メートル(目測)
 幹周:9メートル(目測)

 訪問:2017.9

探訪メモ:
 神社の広場に駐車させていただき、参詣込みで大樟を見させていただきました。
 「鈍土羅の樟」とセットでぜひおたずねください。

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