巨樹たち

茨城県日立市「御岩神社の三本杉」

霊山の巨樹には天狗が棲む

 茨城県日立市の山中に古代より霊場として存在し、修験道の道場だった歴史も持つ御岩神社。
 神仏習合の信仰体系を保ち、現在でも全国有数のパワースポットとして知られているようです。

 そのご神木として聳えているのが「三本杉」
 何度か訪問していますが、今回はお正月でした。

 三本杉は山門の手前にある。
 巨樹目当てで行くと、そこで捕まって先へ進めなくなってしまうので、ここは気を鎮めて、まずはお参りを果たしましょう。
 初詣でもありますし。

 本殿まで、鬱蒼とした杉林の中を巡ることになります。
 小川を渡ったり、途中にもいくつもの小さな社があったり。
 この林を構成している杉たちも、皆かなりの背丈を誇っています。

 いかにも霊域であるという空気を感じながら、お参りを果たします。
 伊邪那岐尊、伊邪那美尊、大国主命をはじめ、ありとあらゆる神様を祀っておられます。

 実は、この拝殿が本当のスタート地点。
 本当のお参りを果たす人たちは、修験道スタイルで霊山である御岩山を「登山」することになるそうです。
 冬季閉鎖される険しき道ですが、巡っていくうちに総勢188柱もの神様に出会うことができる。

 そこまで行かずとも、長い歴史と、神様仏様がごっちゃになった独特な霊場感を実感することができます。

 話では、人工衛星だかNASAだかが宇宙から日本を見た時、一箇所強烈に光って見えた場所があり、調べたら御岩山だったとか……。
 強烈なパワースポットだというわけです。

 ……さて、山門に戻ってきて、改めて三本杉の姿に圧倒されます。
 とにかく背が高く、広角レンズで這いつくばってもフレームに収めきれません。

 「この先霊山につき」と、山門をくぐろうとする者を試すような特有の緊張感を醸しています。
 「その昔、三又になった部分に天狗が棲んでいた」とか、「この杉の葉を焚くと気が狂う」とか、恐ろしげな伝承も伝わっているそうです。
 神、仏、妖怪までもが出てくる、まさに神秘の地。
 この杉が三本の合体樹なのか、分かれて三又になったのかも未だ確かな答がないようです。

 他の杉たちよりも明らかに抜き出ている長身を目眩を感じながら見上げる。
 妙に冷たい空気に、樹冠に妖しい影を見たとしてもかえって不思議はないように感じてしまいます。 

 林野庁「森の巨人たち100選」にも選出されています。
 データ各種で差異がありますが、この調査が新しいもの(平成12年)のようです。
 ちなみに、茨城県からは唯一の選出だそうです。

 樹高50メートルだとすれば、茨城県では「三浦杉(58メートル)に次いで高いスギ巨樹となると思われます。

 存在感ゆえか、通り過ぎざまに多くの人たちが手を合わせていきます。
 これも神様のひとつ、まさに「一柱」ですね。

「御岩神社の三本杉」
 茨城県日立市入四間町1215
 御岩神社
 推定樹齢:500年以上
 樹種:スギ
 樹高:50メートル
 幹周:8.48メートル

 森の巨人たち100選
 県指定天然記念物
 訪問:2017.1、2018、2019他

探訪メモ:
 有名な神社で、敷地の外にも拡張された駐車場があります。

 この訪問は1月9日。
 初詣も一応落ち着いてきていたようですが、ピーク時は混雑するはずです。 
 北国感があり、茨城南部よりもだいぶ寒いです。

「入四間宿の五本杉」

残り二本、墓地の守り樹

 御岩神社のすぐ近所の集落、入四間宿(いりしけんじゅく)。
 その西の出口付近にある墓地に幹周7メートル超の杉巨樹があると知って、見に行ってきました。
 道から見えない立地ですが、ストリートビューで言えば、この「↓」の道を進み、杉木立の中が墓地だったはずです。

 御岩神社のご神木に対してこちらは「五本杉」……なのですが、今は見ての通りの二本しか残っていません。
 大怪我で大半の指を詰めてしまった手みたいに見えて痛々しい。
 なんとかやってます……という風。 

 正面で見た時の主幹の太さはそれなりの迫力がありますが、全て揃っていた時はもっと扇型に広がっていたのでしょうか。
 複数のスギが癒着した合体杉のようです。

 すぐ裏の墓地へ登る階段にも太い根が進出し、それ自体が階段として使われているかのようでした。
 墓地の守り樹として生きてきたのでしょう。

「入四間宿の五本杉」
 茨城県日立市入四間町宿
 推定樹齢:不明
 樹種:スギ
 樹高:20メートル
 幹周:7.0メートル

 市指定保存樹木
 訪問:2017.1

探訪メモ:
 集落内の道路が狭いので気を付けましょう。
 駐車場はないので、様子を見つつ路肩に短時間停めました。

 巨樹だと気付いてもらえず、雑木や蔦に埋もれてしまっているかもしれません……。

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