巨樹たち 長野県長野市「赤岩のトチ」 / 0件のコメント 長野最大、日本2位の巨大トチ 南北に長い長野県のほぼ最北に当たる地域、長野市から西の山中、七二会(なにあい)という地区に、全国でも最大規模と言われるトチノキの巨樹があることを知り、尋ねました。 「赤岩のトチ」です。 一応は長野市内。字面からアクセス良さそうな印象を受けますが、結構な山中です(市町村合併か……)。 のどかな集落を眺め、奥に入っていく。各種ネットmapに記載があり、役に立ちました。 看板などもありますが、道は次第に林道状態に。 細い登り道を脱輪しないかハラハラしながらしばらく走り回ることになりました。 詳しくはドライブレコーダーの動画でどうぞ(音声なし、なんかクルマ動画っぽいですが笑)。 対向車とすれ違い不可能。転回できないかもと思うと、躊躇われ……かといって、徒歩ではきついと思います。 登り切れば、2台ほど停められるスペースが作ってあり、柵に沿って斜面を下っていく散策道になります。 しかし、その時点でもまだトチの姿は見えない。 その存在感に期待しながら、山道を下り続けます(足腰に自信のない方には辛いかも)。 するとある時、明らかに他とは異なる樹影が……あれだ! 疑うべくもなし。すぐにわかりました。 第一印象は、「黒い樹だ」。 遠目にも、他の樹々より明らかに密度感と重量感がある。 近づく一歩ごとに、その巨大さに心打たれます。 幹は二股に分かれていますが、杉にあるような合体樹ではない。 このトチノキ自体、かなり急な崖に生えており、手前側と奥とでは根元のレベルが大きく異なっています。 間近まで近づいて観察することができます。 張ってあるロープは、一応の崖からの転落防止策のようです(現在このままかは不明)。 双方の幹は下方で強固に結びついており、見えない反対側で一本に合体している模様。 幹(根?)はさらに3、4メートル下にまで伸びて崖に食い込んでいます。 危険すぎて回り込んで撮れないのが悔しいですが、正面からは驚くべき巨樹として確認できることでしょう。 それにしても、凄まじい重量感、力強さ。 見るこちらも立地が限られ、寄ろうとすると、ぴょんと跳んでトチの根の上に立つしかなくなります(滑落注意)。 感触もさながら建造物……いや、それ以上の固さ、頑強さを感じます。 まるで岩山のように、少しも動じる気配がない。この崖もトチのおかげで崩れずにいるのではないか。 トチは難しい字では「橡」と書きますが、まさに樹中の象のよう。 というか、巨樹のために存在する字のようだと思えてなりません。 危なかしくも、なんとかアングルを考えて撮影を試みますが、その巨大さゆえ視界全てがゴツゴツした壁のような樹表で埋まってしまう……。 これから巨樹撮影を始める方にお伝えしたい。 超広角(24mm以下)は持っていけ。と。 簡単に立てない場所にこそ、フレームからはみ出すような巨樹が鎮座しています。 強烈な存在感の一方で、近寄りがたさは感じませんでした。 近くに寄って来るがいい……しかし来たところでお前に何ができる? そう。写真すら満足に撮れない自分です。 この崖で1300年も生きている巨大な存在に対し、いくら足掻いたところで、その一部を切り撮るのが関の山。 自分をすごくちっぽけに感じます。 ここの5月はじめの気候は、トチの樹の目覚めにはまだ早いのでしょう。 頭上では枝先に柔らかそうな新しい葉が出てきたばかり。 こうして春ごと、1000回以上も、新しい葉を生み出してきたのですね。 帰り際、足元にたくさんトチの実の殻が落ちているのに気づきました。 間違いなく、この巨樹がもたらした山の恵みです。 この崖から山中を見渡し、森の生き物に実や、全樹種中トップクラスに多いと言われる蜜まで提供する。 すごく大らかで、小さき者にも優しい山の守り神なのです。 解説文。 かつてこの樹の下は百坪ほどの平地で、清水が湧き、滝となっているのを1000年以上も前から知られていた。 西暦1800年台の大地震で崩落したが、トチと清水は残り、永らく村人の暮らしを潤した……。 幹周12.4メートル、推定樹齢1300年。 日本第2位、長野県最大のトチノキですが、意外にも長野市指定天然記念物どまり。 見た感じでは、国天でも全く違和感がないレベルです。 「新・日本名木100選」にも認定。 1990年からの企画ですが、選ばれた樹の中にも、今や枯死・倒壊したものが少なくない。 このトチの枝にも枯損が見られましたが、ずっと森を見守り続けて欲しいものですね。 「赤岩のトチ」 長野県長野市七二会 推定樹齢:1300年 樹種:トチノキ 樹高:20メートル 幹周:12.4メートル 市指定天然記念物 新・日本名木100選 樹種(トチ)幹周全国2位 訪問:2017.5 探訪メモ: 道の感じは動画の通り。 運転に自信がないという方はご注意を。 コンパクトカーなら道幅は心配ないですが、上り下りの険しさからは四輪駆動車が欲しい、そんな感じ。 四駆の軽トラがいいかな。笑 終点には2台ほど停められます。 徳島県の「桑平のトチノキ」もそうですが、「トチの巨樹=険しい立地」という式がインプットされつつあります。 日本1位という「太田のトチノキ」も見に行きたいですが、これも同様。 しかし、苦労を乗り越える価値は必ずある。トチの巨樹にハズレなしと思っています。 関連