巨樹たち

福島県伊達市「三田八幡神社のケヤキ」

幹周囲7mの「カサブタ」

 (新しい巨樹を訪ねてきましたので、ザッピングして掲載していきます。)

 宮城県から茨城県へ移動するということになり、それならば道中、点々と巨樹を追って行きたいと考えました。
 Google mapに予め保存してある巨樹と巨樹をつないでルートを作りましたが、気まぐれに近くの神社をクリックしてみると、「なんだ!?」と目を奪われる画像が。
 場所は、福島県伊達市の小さな神社らしい。同市は福島県最北の町であり、南下していく身としては寄りやすい。ともかく行って実物を見てみることにしました。
 「三田八幡神社のケヤキ」です。

 伊達市の市街中心から西、秋田新幹線伊達駅から見ると東側に阿武隈川が流れています。大正橋という橋がある辺りが「伏黒」という地区で、その中にあります。
 案内標識などはないので、実際の詳細は結局Google mapなどを頼ることになるかと思います。
 県道125号から細めの路地に入り数十メートル行くと、目の前に写真のような目立つ姿が現れます。
 間違いない、これだ。この見過ごせない異景。

 ご覧の通り、枯れています。
 しかし、枯れた今でも巨樹である存在感を失わず、人を驚かせる迫力を発しています。
 幹周囲は7.2mと見積もられているらしい。
 このカタチ、質感、ボリューム。間違いなく大きなケヤキのものです。

 「三田八幡神社」というからには八幡神を祀っておられるのでしょう。小さな社は地域の鎮守様といった感じです。
 ケヤキのボリュームはこうしてみると結構なもので、ほとんど社が二つあるかのような存在感。
 この対比がまた目を驚かせ、訪問してみようと思い立たせる効果があったのだと思います。

 主幹は地上2、3mのところで凄絶に折れ、無くなっている。
 太さから健在だった頃の姿を想像しますが、社や道路、隣家までも樹下に入れるような立派なケヤキの巨樹だったのではないでしょうか。

 朽ちた主幹の足元には(おそらく食べられないであろう)キノコが群れていました。
 他のサイトなどで写真を探してみると、15年ほど前にはすでに現状と変わらない姿で写っているようです。
 ここまで明確に枯死していながら、長年原形を保っているのはケヤキだからなのかもしれませんが、それでも、ゆっくりと風化していきつつあるように見えます。
 ある日手を触れたら、ガサッという音と共に粉々に崩れ去るのかもしれません。

 しかしこの樹……実はまだ死んではいません。
 いや、そんな風に書いたら、「お前、どこ見てんだ。それは俺のカサブタだよ!」と樹に怒られるかもしれない。
 朽ちた大きな主幹の真後ろで、ひこばえが育ったものでしょう、もうひとつの幹が着実に大きくなっていました。
 目測にして幹周囲1m以上、高さは10m以上は確実にあるでしょう。
 青々とした葉を揺らし、樹皮にはケヤキ特有の紋様が浮かび上がっています。

 でっかいカサブタですねえ。
 と、馴れ馴れしく話しかけてみました。

 枯死したと判断されたのか、天然記念物指定はされていません。
 よって、歴史などを解説する資料もナシ。

 人間尺度からすれば永遠に思える一生を生きる巨樹ですが、ある意味、こうして世代交代できる個体は幸せかもしれません。
 姿は変わるかもしれないけれども、これからも残っていくでしょう。

「三田八幡神社のケヤキ」
 福島県伊達市伏黒荒屋敷8
 推定樹齢:300年以上
 樹種:ケヤキ
 樹高:12メートル
 幹周:7.2メートル

 訪問:2020.6

 探訪メモ:
 駐車場はありませんが、路肩に停めてもすれ違えるくらいの道幅はあります。奥が梨園。交通量も無いわけではないので、邪魔にならないようにしましょう。

 幹周囲、樹高、樹齢については、環境省DBで検索すると出てきます。
 1988年実測とのこと。現在では二世の樹高はもっと高いと思います。
 伝承などが不明なので、推定樹齢については、「ケヤキの300年相当」ということなのでしょう。

4件のコメント

  • to-fu

    改めて眺めるとケヤキがこうやって存命するパターンはとても珍しいですね。
    クスなんかだとひこばえが二世樹的に成長しているものも見かけるんですけど。
    もし知らずに車で通りかかっても駐車して駆け寄ってしまうと思います。

    それにしてもこの本体、かさぶたさん。たしかに朽ちてはいますが、何だかじっと見入ってしまう魅力がありますね。根本だけの姿なのに巨樹としての威厳がある。朽ちた幹もいずれは崩れてなくなり、いつかはこのひこばえが新たな巨樹として名を馳せることになるのかもしれません。この姿を見ることが出来るのは巨樹の長い人生?からするとほんの一瞬に等しいと考えると、本当に彼らとの出会いも一期一会ですよねえ。特に最近は天災に見舞われがちですから、次回なんて無いかもしれないと常に意識して一度一度の出会いを大切にしたいものです。

    • to-fuさん>
      そうですね。言われてみれば、ケヤキでこのパターンはあまり見た覚えがありません。
      雪国の裏杉は別として、どちらかと言えば南国系のワザっぽいです。

      印象的に福井の「泉福寺のケヤキ」のカテゴリーかもしれません。
      あちらよりはだいぶ小さいですが、離れたところからでも「何かある」「あれはなんだ」と振り向かせる気配があります。
      旧巨樹のこの部分が消え去る頃、背後の二世樹が巨樹になっているはず。
      ただただ朽ちて消え去るのみという老樹もいくつもある中、この樹の場合、それが期待できるところがまた良い点ですね。
      地区的にも旧家が多そうな一角ですし、長い時間のスパンで見守ってくれるのではないかと思います。
      何十年かして、すっかり忘れた頃、あの時のカサブタさんか! となってくれたら楽しいですよねえ。

  • RYO-JI

    枯死してしまった凄絶なケヤキの姿に悲哀を感じましたが、ええ!カサブタ?
    その表現で一気に表情が綻んでしまいました。
    かつて威容を誇った巨樹の悲しいお話かと思いきや、そこから新たな生命が生まれているという感動のお話でしたね。
    これまでに何度も樹木の逞しさに触れてきましたが、それでもこういうのを見ると驚いてしまいます、いや、面白い!
    ヒコバエには元々のケヤキの強い遺伝子が当然組み込まれているでしょうから、同じように、いやそれ以上に大きく育ってくれるでしょうね。
    その過程で、邪魔になったカサブタ部分がボロッと崩れ落ちることも想像できる訳で、マニアとしては今が見頃なのかと思ってしまいました。

    ケヤキと社の比較写真で、これは小さく見える社だけど実はもっと大きいのでは?と想像しながら読み進めていきましたが、
    最後のヒューマンスケールでその想像が甘かったのだと悟りました。
    いや、更に大きかったです、社もケヤキ(正確にはカサブタ)も。
    人間がこれほどのカサブタを作ろうとすると、想像したくもありませんが命を脅かすほどの怪我でしょうから、
    やっぱりこのケヤキは瀕死の重傷から生還したのだなぁと嬉しくなりますね。

    • RYO-JIさん>
      リサーチ段階から、これが枯死した巨樹であることはわかっていたので、それなりの接し方で見に行ったつもりだったんですが、見ているうちに考え方が変わってきました。
      ひこばえを残すという言い方もまた違う。もはや世代は移っていて、過去の栄光にすがろうという気もないんだなと、そういう印象を受ける樹でした。
      擬人化するつもりはないですが、こういう生きる姿勢は、いろいろなことを投げかけてきますね。
      早くもっと大きくなってほしい! そう思いました。

      ホント、これが全盛の頃はかなり壮大なケヤキの巨樹だったんじゃないかと。
      乾燥して堆積が萎んだにせよ、目の前で見ると視界いっぱいになります。
      どうも人間に切られたというよりは、ボキッと倒壊したような感じの傷口。
      倒れた時は大変だったでしょうね。

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