巨樹たち

千葉県匝瑳市「安久山の大シイの木」

千葉県最大、全国4位の大スダジイ

 水気と潮気がきつい千葉がシイ・タブ王国であることは公然の事実です。
 知られてないだけ……というか、普通の人はあまり興味がないかもしれませんが、事実なのです。

 その中でも、ひときわ有名で巨大なシイが「安久山(あぐやま)の大シイの木」
 その巨大さは、シイという樹種そのものを見直すくらいのものでした。

 所在は千葉県匝瑳(そうさ)市。県外の方には少難読地名。幕府に献上された「多古米」で有名です。
 大シイは小高い安久山地区の個人のお屋敷にあります。

 こちら、平山さん宅では、まず管理費として入場料(200円)を納めます。
 大シイはお宅の裏側にあり、……

 うおっ!? と、思わず仰け反るような巨大な姿が現れます。

 完全に想像以上です。
 戦慄する我々に対して、「じゃあごゆっくり見てってください、最後に古い家もご案内します」とのこと。
 さすが、じっくり眺めたい愛好家心理をよく心得ておられます。
 全国の巨樹についても詳しく、有意義なお話をたくさん聞かせて頂きました。


 じっくり「安久山の大シイ」を見ていきましょう。

 スダジイの巨樹で多いのは、幹周囲7、8メートルほどのもの。
 この樹のように10メートルを超える個体にはなかなかお目にかかれません。
 樹種別で千葉県1位、全国でも第4位にランクされています。

 しかし、恐ろしいことに、近年、東京都島嶼地域の原生林で巨大なスダジイが次々見つかり、そもそものランキングが総入れ替えになってしまうというニュースが……。

 これにより、東京都が有する巨樹ランキングが、すなわちほとんど「スダジイランキング」へと変貌する。
 東京都はこのどんぐりの樹を都の樹にするべきなんじゃないの? ……などと思ってしまいました。

 根張りが大きく、どれが主幹かもわからない。
 とうに主幹が失われたため、生存戦略としてこのように多数に分岐したのかもしれません。
 植物は見ている前では微動だにしませんが、この姿には躍動感すら感じます。

 また、この樹特有の特徴と言えば、熱帯性の植物のような板根です。
 これまで見てきたシイ巨樹にはなかった特徴で、この板根だけでも人の背ほどの高さがあります。

 屋敷の樹として保護されていますが、台風によるものか、折れている箇所もある。
 また、周囲の土壌は湿気が多く、粘土質のようにも見え、朽ちたり、菌類や着生植物も生えていますが、「それがどうした?」と言わんばかりの猛烈な成長ぶり。

 巨樹ともなるとグロテスクなまでに迫力に満ちるスダジイ。
 この樹も相当なルックスですが、なぜかそれほど「不気味」「怖い」という気分にはなりません。
 あふれる生命感が上回っているからでしょう。

 繁茂面積広大な樹冠が、お宅の屋根の上にかかっている。
 雨樋が詰まらないように等、ご苦労察します。
 にも増して、この規模の樹が存続していくには並大抵でない思いやりに恵まれなければ難しいはず。

 先祖代々、こんな巨樹が実家の庭に植わっていたなら、人生どう変わったものでしょうか。 
 樹を見る目だけでなく、価値観が根底から変わってしまいそうです。
(環境省のDBに、平山さんの奥様による「巨樹との生活」を感じさせるコラムが載っておりました)

 そのような稀有な環境で暮らす平山さんは、築130年のご自宅を改築し、大シイを大迫力で眺められる古民家ホテルとする計画を語って下さいました。
 なるほど、この方あってこの樹ありだなと。そう感じました。

 解説文。
 名実ともに千葉県内最大のスダジイ、シイ王国の王者というべきか。

 平山さんからのネタバレ情報によりますと、環境省の巨樹調査隊がこの大シイをドロー……いや、この辺にしときましょう(隠す意味がない)。

※その後、こちらのネタも環境省DBにアップされました。探してみてください。

 千葉県を代表する一本。
 巨樹と人の関係について、良い記憶をまたひとつ増やすことができました。

「安久山の大シイの木」

 千葉県匝瑳市安久山 平山家
 推定樹齢:300年
 樹種:スダジイ
 樹高:20メートル
 幹周:10メートル

 市指定天然記念物
 樹種(スダジイ)幹周県第1位

 訪問:2018.8

 探訪コメント:
 駐車場は2、3台ほど。
 敷地内に無断侵入しないように気をつけましょう。

 古民家がどのように発展していくのか、再訪するのも楽しみです。

 超蛇足ですが、この後、「天神の森のシイ」へ向かう過程でのお昼事情を。
 坂東太郎(利根川)のうなぎは諸事情(¥)で行けないので、同行のto-fuさんに平謝りしつつ、農道沿いにある怪しいピザやさん「タコピザ」に。
 オクトパスじゃなく、この辺は「多古」って地名です(タコのピザもあるにはある)。

 そこで我々、「和牛100%!」おすすめハンバーグを100%シカト、「これを頼まない奴が負け犬」というくそルールを自己発生させ、テリヤキシャークバーガー。
 パインとパプリカが絶妙にサメくささを消し、美味しく完食です! うん、次は絶対ビーフにする!(おい)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA