巨樹たち

岩手県九戸郡「山田の千本松」

うつくし松は雨を喚んだ

 岩手県の最北部、九戸郡軽米町でもう一か所。
 同町「古屋敷の千本桂」を訪ね、八戸自動車道軽米ICを越えて東へ。10キロ、15分程度の道のりを進みます。

 今回の巨樹へは、軽米ICを起点として「軽米町ハートフル・スポーツランド」を目印にするのが良いと思います。
 この道路を数分南下すると左手に入り口が見えてきますが、周囲はことごとく雑木林で、標柱もさほど目立たないので見落とさないように。
 見落とし、心細く行きつ戻りつしたヒトがここにいます。

 入り口からは未舗装の坂道で、雨水の流れが穿った溝で荒れていましたが、四駆でないと上れないというほどではなかったです。

 開けた土地に堂々とそびえる「山田の千本松」。
 はからずも連続で「千本」シリーズを踏んでしまいました。
 千本というほどの茂りではないですが、いわゆる「美し松」と呼ばれる優美に枝を分岐させるタイプ。
 「千本松」と呼ばれるマツも全国的には多数存在するので、どこの千本松か? を忘れず表記する必要がありますね。

 現地解説によれば幹周4メートルちょうど、樹高17メートル。
 同じ旅路で青森県階上町「天頭台のアカマツ」を見てきましたが、匹敵するアカマツです。
 柵が広めでそれほど接近できませんが、むしろこちらの方が大きそうで、数値よりも太く高い気さえします。

 平成十(1997)年の解説で推定樹齢が260年。ということは現在は286年くらいになるのでしょうか。
 もしかすると、昭和55年当時から260年と書き続けられている可能性もありそうです。
 なので、直接260年前の根拠となった歴史を知りたい……と、林の奥へ続く踏み分け道を進んでみたところ、草木に埋もれるように神社建築の一部が見えました。
 ここもかつては神社の境内か参道だったのかもしれず、由緒から樹齢が推定されていそうです。

 先客の駐車車両があり、どうやら社用車DE昼寝中の模様。いつもここで一休みしてるんだろうな……と、経験上、現場仕事の日常を思います。確かにここは人目につかない。
 観光地化されていない、この場所の現在の属性を物語っていると言えそうです。
 けど、スミマセンね、ちょっとばかり邪魔な位置です。おかげで車を転回するには草むらを踏まないといけないし、切株が隠れてたりして、ヒヤッとしましたよ。

 きれいな傘状だった時期もあったのでしょうが、枝の片側が折れ、なくなっている。
 平成9(1997)年発行の「岩手の名木・巨木(岩手日報社)」にも折損や病害のことが書かれていますが、当時と比べてもさほど様子が変わっていないようなのは幸い。
 又になった部分からは別種の若木が着生して育っています。葉からすると桜かもしれません。

 枝ぶり良い角度を探していると、冷たい風が強まり、ばたばたと大粒の雨が叩きつけてきて、自然と「この辺にしとこう……」と息をつきました。

 岩手北部~青森東部では現在もアカマツの自生林があり、巨樹も複数見つけられる。
 マツノザイセンチュウの脅威で全国でマツ巨樹が消え去っている昨今、自分でも意外なほどの幸福感を覚えました。

「山田の千本松」
 岩手県九戸郡軽米町軽米第23地割
 推定樹齢:280年
 樹種:アカマツ
 樹高:17メートル
 幹周:4.0メートル

 町指定天然記念物
 訪問:2023.10

探訪メモ:
 「軽米町ハートフル・スポーツランド」を目印に南下しましょう。
 標柱および入り口はあまり目立たないかも。
 1、2台駐車できるスペースはあります。

この旅の様子は「2023年・青森県東部巨樹探訪4」でどうぞ。

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