巨樹たち

岐阜県高山市「千光寺の五本杉」

針束のごとし、五本杉

 古刹・千光寺は、かの円空が滞在し木像を作ったお寺として知られています。
 高山市内で何度も目にした両面宿儺の図像も、円空にちなんだものでした。

 その千光寺へ登っていく道の傍、杉林の中に立っている五本杉です。
 道から巨樹の姿は見えませんが、大きな看板と駐車場があるので見落とす心配はない。

 「国指定天然記念物 五本杉 樹齢1200年」

 気分を高め、杉の元へ山道を下って行きます。

 しかし……
 あくまで一個人の感想として書かせて頂きたいのですが、これは語るのが難しい樹です。
 ことに石徹白を巡った直後とあっては。

 「古くから知られている」と書籍にはありましたが、それがどれだけ「古く」なのか。
 数学的に「歳経るうちに幹が増えた」ものでないことは素人目にも明らかです。
 一か所に生じた五本の苗がそのまま育った姿に他ならず、周囲あるいはすぐ隣に正確なまでにこの1/5のサイズの単幹スギが立っている。
 ならばこれら無名・無指定スギも樹齢1200年でなければおかしいが、そう見えるかどうか。

 大書される推定樹齢の数字や「国指定天然記念物」の文字を我々素人は鵜呑みにしがちですが、自分自身に案外正確な知覚力と深い思考力が備わっているということも知っているはず。
 多様な考察があって当然だと感じます。

 風習なのでしょうが、腐った縄がスギの不朽を早めているようにしか見えないのも見苦しく、胸が悪くなってしまいました。
 さっさと取ってあげた方がいいに決まってる……。

 樹はただまっすぐ天を衝いて立っているのみ、そこにはどのような思惑も主義思想もありません。
 見る側のヒトとして、巨樹の前にどう立つべきか、考えました。

「千光寺の五本杉」
 岐阜県高山市丹生川町下保
 千光寺
 推定樹齢:1200年
 樹種:スギ
 樹高:50メートル
 幹周:12メートル

 国指定天然記念物
 訪問:2017.10

探訪メモ:
 林へ入る手前の路肩に駐車スペースがありました。
 雨上がりの場合、足元がぬかるみそうです。

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