巨樹たち

福島県相馬市「涼ケ岡八幡神社の夫婦杉」

堂々たる大杉と珍奇植物の境内

 「北右田の屋敷林(タブ)」「泉の一葉マツ」と、福島県相馬市の巨樹を巡り、たまたま立ち寄った立派な八幡神社。
 下調べ等は一切していませんでしたが、思いがけず立派なスギと出会えました。
 涼ケ岡八幡神社。
 「すずがおか」と読んでいたのですが、「すずみがおか」が正しいようです。

 池にかかる赤い橋を渡り、両脇に桜並木のある参道を進む。
 相馬市の観光サイトに見事な写真がありますが、お花見の名所としても知られているようです。
 写真の「随身門」はじめ、元禄八年(1695)年に建立された七棟の建物が国の重要文化財指定を受けているそうです。
 訪問時は複数の建築がメンテナンス工事真っ最中でした。
 そして、この「随身門」を一歩くぐると……

 説明不要、無視して通る方が無理というものでしょう。ドン!と太い幹が立ちはだかります。
 これがご神木「涼ケ岡八幡神社の夫婦杉」。

 巨樹に「夫婦」とつく場合には、2パターンあるのはご存じの通り。すなわち、

 1:二本の幹が融合している、または幹途中で二又に分岐している一本の巨樹。
 2:比較的近くに立っている二本の巨樹をペアとして指している。

 今回の「夫婦杉」を実物だけ見て考えると、どちらにも当てはまらないように見えますが、現地立て札で「2」のパターンだったと知ることができます。
 平成14(2002)年の台風で片割れのスギは倒壊してしまったそう。
 付された写真を見ると、並び立っていた時期にも、倒壊した方のスギはすでに弱っていたように見えます。

 悲しいかなパートナーを失った今も「夫婦」の名を残しているというわけですが、いや、堂々たる体躯。
 「幹周囲7.5メートルとはどういう大きさか」をまじまじと見せつけてくれます。
 そう、この迫力こそがまさに幹周7.5メートル。
 どこぞの大杉神社のスギの数値はやはり意図的に盛られていたんじゃないか! などと。
 いかにもマニアな感想ですが、スギ巨樹あるあるですよね。苦笑
 ある意味でお手本的に見事なスギ巨樹だったと言えると思います。

「涼ケ岡八幡神社の夫婦杉」
 福島県相馬市坪田涼ケ岡51
 涼ケ岡八幡神社
 推定樹齢:800年
 樹種:スギ
 樹高:30メートル
 幹周:7.5メートル

 市指定天然記念物
 訪問:2025.2

探訪メモ:
 かなり立派な神社で、複数の広い駐車場が用意されています。

 さらに、これも思いがけないことでしたが……
 涼ケ岡八幡神社の境内には、他にも植物学的に貴重な見どころが複数あります。

 そのひとつが「縁結びのカヤ」
 よくある連理(枝や幹が隣接する樹と癒着してしまう)現象だなと予想は付いていながらも、実物を見ると感心します。
 完全に一体化しているのかはわかりませんが、おお、なるほどという説得力。

 さらにこのカヤには貴重な「マツラン」「カヤラン」が着生している。
 冬の気配が残る訪問時はまだ無理がありましたが、春~初夏頃に探してみるのも楽しそうです。

 縁結びの御利益作法もあり、なるほど、アグネスも来たんですねえ。

 他にも、すぐ近くにあるイチョウは、雄の樹なのに一枝だけギンナンを実らせるそう。
 これだけ色々あると、鈍感な自分も、この境内にはパワースポット足り得る何かがあるのではないか? と思いたくなってきます。
 そういえば、「毎日3キロ歩いてお参りしているんだよ!」というドテラにサンダルのお父さんとお話したのですが……実は妖精だったのかもしれません。

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