巨樹たち

秋田県湯沢市「競いのもみ」

並び立つ二僧の生き写し

 横手市から南下し、秋田県最南端にあたる湯沢市に、モミの巨樹を訪ねました。
 しかもツインズ。

 その名も、「競いのもみ」。
 曹洞宗のお寺、最禅寺の墓所の入り口両側に直立する二本一対の巨大なモミです。
 湯沢市の文化財ページによれば、双方ともに幹周4.7メートル/樹高35メートル。さながら生ける門のよう。

 もちろんこれは植樹されたもの。
安永5年(1776)、この寺の十八世・耕田祖苗(こうでんそみょう)大和尚が愛弟子「祖心(そしん)」と「祖光(そこう)」の出世を願ってモミの樹を1本ずつ植えさせた……という伝承があるそうです。
 祖心、祖光は切磋琢磨し、その後に二人とも高僧になったとのこと。

 この姿、兄弟、もしくは双子、もっと言えばライバル。
 互いを意識したであろう二僧の生き写しのように、ほとんど同じ巨大さに育っています。

 単幹直上、モミの巨樹はどれも姿がよく似ている。
 日本一の大きさを誇る兵庫県「追手神社のモミ」と他のモミ巨樹の写真を見比べても……いやそれはさすがに言い過ぎだ……ちょっと(だけ)区別がつきにくい。どれもスタイルがいいから、とも言えますが。
 その点、この「競いのモミ」の「二本一対」という個性は初めてお目にかかるパターンで、しかもその双方がまた似ているんだから面白い。

 まっすぐ直立している均整の取れた幹に対し、露出した根は段に沿って盛り土を鷲掴みにし、かなり迫力があります。
 暗い堂の中にはぼうっと蝋燭の灯がともり、なんともムードがありました。

 少し離れた丘の上にも、お堂とともに二本のモミが植えられているのが見える。
 これがそうなのかは定かでないながら、書籍「秋田の巨樹・古木」によれば最禅寺には他に「義隆公お叱りのもみ」というモミの古木が存在するとありました(秋田藩二代藩主・佐竹義隆か)。

「競いのもみ」
 秋田県湯沢市山田上堂ケ沢81
 最禅寺
 樹齢:300年
 樹種:モミ
 樹高:35メートル
 幹周:4.7メートル
 (2本とも)

 市指定天然記念物
 訪問:2016.8

探訪メモ:
 お寺の駐車場をお借りしました。
 至る道には細めの個所もあり、お盆時期などの訪問にはご注意を。

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