類い稀な豪農と化し、財産を使い尽くすのも難しいように思えたのだが……与兵衛から数えて七代を重ねた時、蝋燭の灯を吹き消すかのように、突然、その家は没落して消え失せてしまった。
つくづく慾をかいた与兵衛が、無間の鐘をつく時、子孫の繁栄も欲し「七代良かれ」と念じたためだ。
まさにその通り、七代富を与えた後、鐘はぱったりとそれを断ち切った。
鐘は約束を果たしたというわけだ……。
つまり……今度は、与兵衛が、その約束を果たす番となる。
与兵衛、乗じて富を味わったその七代の子孫たちの魂までも、無間地獄の永遠に終わらぬ虚無の苦しみに呑まれたものであろうか……。
当時の面影を遺すものといえば、ただ鬱蒼と茂るこの椎の巨樹だけである……。